再生医療に関して
当科腎臓再生チームの研究内容につきまして、以前より各種メディア等で研究に関する記事を取り上げていただいており、その後今日まで多数のお問い合わせをいただいております。現在、相談のための診療予約が入り、通常の一般診療や研究業務に支障をきたす事態を招いております。誠に申し訳ございませんが、腎臓再生に関するご質問等での診察予約は受け付けておりません。また、現時点で再生治療の被検者様募集(治験)などは一切行っておらず、治験等に関する個別のお問合せについてはご遠慮申し上げております。この点、何卒ご理解くださいますようお願い申し上げます。尚、患者様個人からのご寄付につきましても遠慮させていただいております。腎臓再生研究につきましては、進捗があり次第、当ホームページへ掲載予定でございますので、随時ご覧くださいますようお願い申し上げます。
横尾教授から患者さんへ
診療実績・外来担当表
診療実績
外来患者数
約4,000 ~ 4,500人/月
病 床
約50床
透析ベッド数
18床
腎生検数
約124例/年間 (関連施設含め626例/年間)
当院では侵襲性の少ない超音波ガイド下の経皮的腎生検にて腎組織診断を行っています。
透析導入患者数
血液透析 約75人/年間
CAPD 約15人/年間(外来通院患者約70人)
生体腎移植例
約7例/年間
現在までに約140例に施行し、10年生着率は約85%と非常に良好です(2019年現在)
施設紹介
慈恵医大腎臓・高血圧内科では各診療において最先端の設備を整えており、快適な優しい診療を受けていただくように努力しております。

CAPD

透析室
研究班
腎病理班
IgA腎症についての臨床研究
厚労省進行性腎障害研究班のIgA腎症前向きコホート研究を主導、1000例以上の登録症例を前向きに追跡し、腎予後判定の識別・治療法選択の妥当性を検証している。また、同研究班が2012年から展開した多施設大規模後ろ向きコホートを解析し、本邦において広く行われている扁桃摘出術とステロイド治療の有効性を検証し、その有効性を示唆する結果が得られている。IgA腎症の生検診断時の約2割に認められる腎機能低下例に対する各種治療介入の有効性についても解析を進めている。これらは本邦の新たな治療指針の策定に重要な知見をもたらすことが期待できる。
ネフロン数研究
剖検腎を用いた日本人の総ネフロン数の推算研究(日本医大・モナッシュ大学との共同研究)の成果が得られ、日本人の総ネフロン数は他人種と比較して潜在的に少ないことが示されている。また、他人種と同様にネフロン数には大きな個体差が存在することを示した。これは黄色人種で初めての知見として国際的にも高く評価されており、総ネフロン数決定における人種差、体格差、社会背景や環境因子などの影響を知るうえで極めて意義深い。総ネフロン数を臨床的に評価することにより、腎予後など、臨床腎臓病学において未解決となっている様々な臨床的多様性について重要な知見をもたらすことが期待できる。現在CT画像検査と腎生検組織から総ネフロン数を臨床的に評価する方法を導入し、各種腎疾患における臨床病態への影響について解析を進めている。
抗酸化分子Nrf2の腎保護効果に関する研究
Nrf2およびその関連分子の活性化はこれまでの研究からその腎保護効果が期待されている。これらの径路に着目し、組織特異的遺伝子改変マウスを用いた基礎研究を行い、腎疾患における意義について詳細な解析を行っている。また、腎生検組織を用いた免疫染色により、これらの分子の各種疾患病態における組織内分布や発現の変化についての検討を行っている。国内外の臨床試験で腎機能の改善が確認されているNrf2の活性化薬の作用機序の詳細な解明は、未だ対症療法に依っている進行性腎疾患の次世代の根本的治療を促進し、新たな治療法の開発に寄与することが期待できる。
ホドサイト障害の分子レベルでの解析
ポドサイト(糸球体上皮細胞)は生理的糸球体濾過機能の中心的役割を担うとともに、その障害は糸球体硬化の過程で共通に観察される病的事象として重要視されている。我々は、剖検腎を用いて免疫染色によりポドサイトを染め分け、stereologyの手法を用いて、ポドサイト数を定量化することを試みている。また、ポドサイト特異的に障害を誘導する遺伝子改変マウスを用いた基礎的実験を展開し、ポドサイト障害が隣接するポドサイトにも波及することや、剥離によって生じる形質転換の分子機序などの成果を報告した(東海大学との共同研究)。単離糸球体より遺伝子発現プロファイルを検討することで、幾つかの遺伝子の発現異常がポドサイト障害に深く関わっていることが示された。さらに、同定された分子群について、腎生検組織の免疫組織学的検討と尿中脱落ポドサイトにおける遺伝子発現の検討を行っている。
腎臓の再生医療に関する基礎的検討:血液透析患者由来iPS細胞の再生能の検討
慢性腎臓病(CKD)に対する人工多能性幹細胞(iPS細胞:iPSC)を用いた腎臓再生医療は現在大きな注目を集めている。CKDにおける尿毒症状態は、内皮前駆細胞および間葉系幹細胞などの体性幹細胞/前駆細胞に対して毒性があり、それらの分化および血管新生能に影響を及ぼすことが示されている。
最近の研究では、非遺伝性疾患に起因する特定の異常が、患者から得られたiPSC由来の製品にしばしば残存していることが報告されている。そのため、非遺伝性疾患によるCKD患者由来のiPS細胞(CKD-iPSC)が腎臓を生成する能力を有するかどうかを最初に評価することが不可欠である。
我々は、糖尿病性腎症および糸球体腎炎による腎不全が原因で血液透析を受けている患者からCKD-iPSCを作成し(HD-iPSCs)、健康な対照からのiPSC(HC-iPSCs)を作成した。この2種のiPSCは同等の効率でネフロン前駆細胞(NPCs)に分化した。さらに、HD-iPSCs由来のNPCsは、HC-iPSCs由来のNPCsと同様に匹敵するレベルのNPCマーカーを発現し、マウスへの移植の際に血管を引き込み糸球体に分化した。 我々の結果は腎臓再生のための細胞源としてのHD-iPSCsの可能性を示している。これはCKD患者幹細胞由来腎臓再生の道を開く最初の研究であり、CKD-iPSCsの可能性を示している。
インタビュー動画
スタッフ紹介
病理解析・IgA腎症チーム
腎臓発生解析チーム
腎臓再生研究チーム
腎生理・代謝班
慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝に関する研究
慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常(CKD-MBD)における副甲状腺CaSR、VDRのDNAメチル化パターンが変化している事を報告している(Hum Cell 2016)。現在CKD-MBDが副甲状腺のヒストン修飾に与える影響、及び細胞周期に与える影響について解析している。また副甲状腺発生に必須な転写因子Gcm2が副甲状腺機能維持に与える影響を解析している。Mgが腎不全患者の生命予後や血管石灰化抑制に関与する事が近年明らかになりつつあるが、我々はMg濃度にプロトンポンプ阻害剤が関与する事を明らかにしている(PLOS ONE 2015)。現在血液透析患者を対象に血清Mg及びiMg濃度が動脈石灰化、そして予後にどのように影響するか前向きコホート研究を行い解析している。また近年、糖代謝が注目を集めており、その中でも我々はインスリン抵抗性に着目、保存期腎不全患者を対象として、インスリン抵抗性とFGF23との関連性を明らかにした(Scientific Reports 2018)。血液透析患者を対象にインスリン抵抗性とCKD-MBD及び生命予後、心血管イベント発症との関連性を調査している。
腎移植に関する研究
我々は、東京女子医科大学、九州大学との共同研究:Japan Academic Consortium of Kidney Transplantation (JACK)に参加し、腎移植患者を対象とする多施設共同研究を行っている。本年度は、Alport症候群および新規膜性腎症について報告し、現在、高尿酸血症、糖尿病の解析を実施している。当院の検討では、GLCCI1遺伝子一塩基多型およびPlasma cell rich rejectionについて報告し、移植後貧血、徐神経後の変化、IgA腎症における扁桃腺摘出術の効果、小胞体ストレスの解析を行っている。基礎研究では、ラット腎移植モデルを確立し、内皮細胞の形質変化と腎線維化におけるpericyteの役割を解析している。
腹膜透析に関する研究
我々は、33年間の後ろ向き研究により、PD関連腹膜炎の病態が変化してきていること、被嚢性腹膜硬化症(EPS)の危険因子になることを報告した(Nakao M Nephrology (Carlton) 2016)。また、PDとHDでカルシウム値とPTHの関連性が異なることを報告した(Morishita M Clin Nephrol 2016)。現在、重炭酸含有腹膜透析液の臨床効果、糖尿病PD患者の検討、腹膜病理の検討を行っている。腹腔鏡検査を用いて腹膜透析液の中性化による腹膜傷害を評価し、東北大学との共同研究の研究で極細内視鏡の開発を行っている。 我々は、糖尿病腎不全患者における腹膜透析の適応について、非糖尿病腹膜透析患者と腹膜透析関連腹膜炎の頻度がかわらないこと、Patient survivalやTechnical survivalがかわらないことを英文誌に報告した。腹膜透析患者の残存腎機能保持に与える脂質の影響について報告しており、現在論文作成中である。また、重炭酸含有腹膜透析液の臨床効果、インクレメンタルPDの有用性、腹膜病理の検討を行っている。腹腔鏡検査を用いて腹膜透析液の中性化による腹膜傷害を評価し、東北大学との共同研究の研究で極細内視鏡の開発を行っている。 我々は、33年間の後ろ向き研究により、PD関連腹膜炎の病態が変化してきていること、被嚢性腹膜硬化症(EPS)の危険因子になることを報告した(Nakao M Nephrology (Carlton) 2016)。また、PDとHDでカルシウム値とPTHの関連性が異なることを報告した(Morishita M Clin Nephrol 2016)。現在、重炭酸含有腹膜透析液の臨床効果、糖尿病PD患者の検討、腹膜病理の検討を行っている。腹腔鏡検査を用いて腹膜透析液の中性化による腹膜傷害を評価し、東北大学との共同研究の研究で極細内視鏡の開発を行っている。
腎性貧血に関する研究
我々は、日本透析医学会データベースを用いた19万人の検討で、血液透析患者において血清フェリチン高値が生命予後悪化に関連することを報告した。また、重要な鉄代謝ホルモンであるヘプシジンが、透析を受けていない保存期CKDにおいて、腎性貧血の病態に深く関与すること、さらには、保存期CKD、HD、PDでその動態が異なることを報告した。現在は、PD患者を対象として、残存腎機能とヘプシジン代謝の関連性を検討している。
多発性嚢胞腎に関する研究
多発性嚢胞腎を引き起こすPKD遺伝子異常があるとき、細胞レベルではミトコンドリアの形態・機能異常が生じている(Sci Rep 8:2743,2018)。細胞骨格蛋白(アクチン結合蛋白)の一部は、多発性嚢胞腎での発現が大きく低下している(ASN 2018). 私達は細胞生物学的な手法で、これら経路の解明と、腎症の予防・治療法の研究に取り組んでいる。
多発性嚢胞腎の生涯にわたる腎症の進行は、遺伝子変異の種類によって大きく左右され、日本人にもその特徴が当てはまる(Clin Genet 87:266.2015)。私達は豊富な症例数や、遺伝診療部との連携の下、遺伝子型-表現型の関連研究・脳血管や循環器合併症に関する研究を進めている。 また、厚労省進行性腎障害研究班として、嚢胞腎のデータベース研究など複数の計画に参加している。
インタビュー動画
スタッフ紹介
腎移植チーム
腎性骨症(CKD-MBD)チーム
腹膜透析チーム
多発性嚢胞腎チーム
高血圧・尿酸代謝班
慢性腎不全モデルラットに対するT型Caチャネル抑制薬の脳を介した腎保護効果
TCC抑制薬は血圧に非依存的に様々な機序で腎保護効果を示すことを以前証明した。近年、血液脳関門(BBB)の通過性に違いがある新規TCC抑制薬としてNIP-301(BBBを通過しない)とNIP-302(BBBを通過する)が開発された。NIP-302の尿蛋白抑制効果と交感神経活性の抑制作用が確認されているが、高血圧腎不全モデルラット(SHR)における腎障害に対する効果、および血圧に対する影響、交感神経活性、脳との関連につきNIP-301も用いて、T-CCBの交感神経活性抑制効果が脳を介するものか、局所の交感神経に関連するのかを引き続き検討する。
原発性アルドステロン症における各種負荷試験および副腎静脈サンプリングとの臨床的特徴の関係
原発性アルドステロン症(PA)は、本態性高血圧症に比し心血管イベントのリスクが数倍高い疾患であるとされ、二次性高血圧症の中でも鑑別が重要な疾患である。診断は、各種負荷試験によって確定診断を行い、副腎静脈サンプリング(AVS)にてアルドステロンの過剰分泌の局在診断を行うが、負荷試験の基準に一定の見解がないこと、偽陰性も少なくないこと、AVSは侵襲を伴う検査法であるが時にエラーを起こすことが散見され治療方針の決定に影響が出る可能性があることより、より簡便な診断法が望まれる。そのため、PAの各病型の臨床像の違いが負荷試験の結果とどう関連するか、またAVSに代わる新たな診断法の開発のためにも、片側または両側過剰分泌の臨床像の違いとAVSの結果、ホルモン動態との関連につき検討中である。
腹膜透析患者における透析排液の(プロ)レニン受容体濃度と腹膜機能との関連(東京女子医科大学との共同研究)
(プロ)レニン受容体(s(P)RR)の発現は、臓器の線維化と関連があるとされている。腹膜透析患者の排液中のs(P)RRの発現を測定し、腹膜機能との関連を検討し、腹膜透析の重大な合併症である被嚢性腹膜硬化症の予測が可能かなどを検討中である。PD排液中s(P)RR濃度は年齢やPD歴とは相関しなかったが、腹膜機能を示すD/P Crと正の相関を認めた。また排液中のβ2ミクログロブリンとの相関を認めたものの、血液中のβ2ミクログロブリンとの相関は認めなかった。別検体でも同様の現象が再現され、また血中のs(P)RRを測定しPD排液中のs(P)RRが相関しなかったことより、PD排液中のs(P)RRは腹膜由来である可能性が高いと考えられた。つまり腹膜機能とPD排液中のs(P)RRは関連があると考えられた。今後腹膜所見との対比を見る予定である。本研究は第24回日本腹膜透析医学会学術集会・総会において優秀演題賞に選出された。
アデニン誘発腎不全モデルラットにおけるアジルサルタンの腎保護効果の検討
検討を継続していたが、アデニン誘発腎不全モデルラットにおいて、アジルサルタン(Azi)治療群は無治療群に比し腎保護効果、尿ナトリウム排泄の亢進、交感神経活性の有意な抑制を示したが、ACE1,ACE2及びACE1/ACE2 ratioに影響を及ぼさなかった。治療群でNCCの発現の減少を認め、これがナトリウム排泄の機序の一部である可能性が考えられた。
塩と体液のバランスについての研究(香川大学との共同研究)
近年、食塩摂取量を一定にしても尿中Na+排泄量は大きく変動することが証明された。尿中Na+排泄増加に伴い、腎臓からの水喪失に対抗して、尿素トランスポーターを介した機序が想定されている。尿素産生が亢進した際には食欲が亢進したり、食事量が増加することが報告されている。マウスでは長期間の高食塩食投与により、尿素産生の亢進を介した心血管系エネルギー代謝の変化との関連、交感神経系との関連を、ラットモデルでの腎交感神経除神経を施行し、検討する。
インタビュー動画
スタッフ紹介
高血圧チーム