2025年12月15日 更新
当科レジデントである山口裕也先生(責任著者:佐々木峻也先生)が中心となり、IgA腎症における「低レベル蛋白尿(0.5–1.0 g/day)」の臨床的意義を検討した系統的レビュー・メタ解析をClinical Journal of the American Society of Nephrology(CJASN)に発表しました。
なお、本研究は奈良県立医科大学腎臓内科と協力し実施されました。また、豪州のThe George Institute for Global Health(UNSW, Australia)の研究者の皆さまにもスーパーバイズをいただきました。
■研究の背景
IgA腎症では従来、1.0 g/dayを超える“顕性蛋白尿”が腎予後不良と関連することが広く知られています。しかし近年、「0.5–1.0 g/dayの低レベルの蛋白尿でも腎機能悪化と関連する」という報告が増えており、そのエビデンスを体系的に評価する必要がありました。
■研究の方法
PubMedおよびWeb of Scienceを用いた文献検索を行い、IgA腎症患者における低レベル蛋白尿と腎予後(eGFR低下、腎不全、eGFRスロープなど)を検討した研究を集め、系統的レビューおよびメタ解析を実施しました。
最終的に23研究(15,289例)が採用され、このうち15研究がメタ解析に含まれています。
■主な結果
〇ベースライン蛋白尿0.5–1.0 g/dayは、0.5 g/day未満に比べて
→腎予後不良リスクが1.73倍上昇
〇経時的蛋白尿(Time-Averaged Proteinuria: TAP)0.5–1.0 g/dayでも
→腎予後不良リスクが2.87倍上昇
〇TAP0.5–1.0 g/dayでは
→年間eGFR低下速度が−1.02 mL/min/1.73m²/年と有意に速い
いずれの解析でも、低レベル蛋白尿が腎機能悪化に明確に関連していることが示されました。
■結論:“0.5 g/day未満まで蛋白尿を抑えること”が腎保護の重要な目標であることを、系統的レビューとして初めて包括的・定量的に示した研究となりました。
国際的にも議論が進むIgA腎症のリスク層別化において、低レベル蛋白尿の臨床的意義を裏付けるエビデンスとして役立つものと考えています。
論文はこちらです。ぜひご覧ください。
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