腎臓再生研究に関しまして(患者様および医療関係者各位へ)

当科腎臓再生チームの研究内容につきまして、以前より各種メディア等で研究に関する記事を取り上げていただいており、その後今日まで多数のお問い合わせをいただいております。現在、相談のための診療予約が入り、通常の一般診療や研究業務に支障をきたす事態を招いております。誠に申し訳ございませんが、腎臓再生に関するご質問等での診察予約は受け付けておりません。また、現時点で再生治療の被検者様募集(治験)などは一切行っておらず、治験等に関する個別のお問合せについてはご遠慮申し上げております。この点、何卒ご理解くださいますようお願い申し上げます。尚、患者様個人からのご寄付につきましても遠慮させていただいております。腎臓再生研究につきましては、進捗があり次第、当ホームページへ掲載予定でございますので、随時ご覧くださいますようお願い申し上げます。

東京慈恵会医科大学附属病院 腎臓・高血圧内科

The Jikei University Nephrology and Hypertension
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東京慈恵会医科大学附属病院 腎臓・高血圧内科

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腎病理班

1. IgA腎症についての臨床研究

厚労省進行性腎障害研究班のIgA腎症前向きコホート研究を主導、1000例以上の登録症例を追跡し、腎予後判定の識別・治療法選択の妥当性の検証を行っている。腎臓病総合レジストリーを用いた解析を行い、IgA腎症診断時の臨床的重症度には地域差があり、腎臓専門医が少ない地域ほど重症度が高いことを報告した(岡林佑典 日本腎臓学会2016, Okabayashi Y ASN 2016)。

2. 各種腎疾患における糸球体密度の臨床的意義

新潟大学小児科との共同研究により、出生時超低体重であった小児例では、対照群に比し糸球体密度が著しく低値であることを誌上報告した(Koike K CJASN 2017)。日本人のネフロン数の推算研究(日本医大・モナッシュ大学との共同研究)も成果が得られ、ネフロン数の個体差、高血圧例・CKD例での解析結果について報告した(Kanzaki G APCN 2016, ASN 2016)。

3. 高血圧・加齢と関連する腎障害に関する臨床病理学的検討

非CKD剖検腎、DM合併剖検腎で皮膜下と皮髄境界の組織指標を比較し、高血圧や加齢との関連を報告した。非CKD剖検腎では高血圧が虚血性病変に保護的に作用すること、DM合併剖検腎における糸球体肥大の部位別特徴など、重要な知見が得られた。(Okabayashi Y ASN 2016, Sasaki T ASN 2016)。

4. メサンギウム細胞の発生・機能に対するVEGFの作用

これまでpodocyteから産生されるVEGFは糸球体内皮細胞だけでなくメサンギウム細胞機能維持に重要であることを、Tet-on systemを利用したpodocyte特異的VEGF過剰発現マウスで見出した。本年度はpodocyte-VEGFがメサンギウム細胞PDGF受容体のリン酸化を調節することを明らかにし、この重要な知見につき論文投稿中である。

5. ホドサイト解離と障害で誘導される転写因子とその機能

podocyteは、隣接podocyteと基底膜との間で緊密な接着を保つことが機能維持に重要である。そこで①単離糸球体からoutgrowthして解離・脱分化したin vitro podocyte mRNAと②Nep25マウスとRiboTagマウスを交配し、podocyte特異的な障害マウスから得られたin vivo podocyte特異的mRNAの遺伝子発現プロフィールを比較した。約100の遺伝子で両者の発現増加率が高い相関を示し、これらには、Wt1、Mafbと競合するEgr1、Maffが含まれていた。培養podocyteを用いた実験では、これらの転写因子の変化によりpodocinの発現変化が認められた。

6. 腎の再生医療に関する基礎的検討:腎前駆細胞のニッチ内再置換による腎再生法

腎臓再生療法を実現するために我々は胎生臓器ニッチ法を開発した。すなわち異種の腎発生部位に幹細胞・腎前駆細胞を注入することで腎臓再生医療を目指しているが、そこには解決すべき課題がいくつか存在する。腎の発生部位にはもともとの腎前駆細胞が存在し、外来異種の腎前駆細胞を注入しても3割ほどしか定着しなかった。そこで、ホスト動物の腎前駆細胞においてのみジフテリアトキシン投与にてアポトーシスが誘導されるCre-LoxPシステムを用いた遺伝子改変動物を作成し、もともと存在していたホスト動物の腎前駆細胞を除去することにより発生ニッチを空けて、新たに別の腎前駆細胞を注入することにより、注入した腎前駆細胞が尿管芽との相互作用を継続し、腎糸球体や尿細管へと発生継続することを確認した。また、除去されずに残った尿管芽由来の組織と連続性を持つことも確認された。(Yamanaka S, submitted)。


腎生理・代謝班

1. 慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝に関する研究

慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常(CKD-MBD)における副甲状腺CaSR、VDRのDNAメチル化パターンが変化している事を報告している(Uchiyama T Hum Cell 2016)。現在CKD-MBDが副甲状腺のヒストン修飾に与える影響について解析している。また副甲状腺発生に必須な転写因子Gcm2が副甲状腺機能維持に与える影響、そしてそのオルソログであるGcm1の腎臓における機能解析をしている。

Mgが腎不全患者の生命予後に関与する事が近年明らかになりつつあるが、我々はMg濃度にプロトンポンプ阻害剤が関与する事を明らかにしている(PLOS ONE 2015)。現在血液透析患者を対象に血清Mg濃度及びFGF23が、全死亡を始めとした各種アウトカムにどのように影響するか前向きコホート研究を行い解析している。また2型糖尿病患者を対象に、糖代謝に関連するサイトカインとFGF23の関連を、インスリン抵抗性と骨ミネラル代謝との関連を調査している。

2. 腎移植に関する研究

我々は、Japan Academic Consortium of Kidney Transplantation (JACK)に参加し、腎移植患者を対象とした多施設共同研究を行った。本年度は、IgA vasculitisの予後・生着率・再発率について(Kawabe M CEN Case Reports. 2016)、傍尿細管毛細血管におけるCaveolin-1発現の意義について(Nakada Y Clin Transplant 2016)、Medullary ray injuryの意義について(Niikura T Transplant Proc 2017)報告した。現在、腎移植におけるAlport症候群・糖尿病性腎症、高尿酸血症に関して解析している。当院の腎移植レシピエントにおいて、GLCCI1遺伝子一塩基多型および移植後貧血の解析を進めている。また、ドナーベースライン生検の腎予後予測因子について解析している。基礎研究では、vivoでは、ラット腎移植モデルを確立し、内皮細胞の形質変化について解析中である。また、ラット腎不全モデルの腎線維化におけるpericyteの役割について解析中である。Vitroでは、培養内皮細胞を用いた細胞外基質の産生機序について解析中である。

3. 腹膜透析に関する研究

我々は、33年間の後ろ向き研究により、PD関連腹膜炎の病態が変化してきていること、被嚢性腹膜硬化症(EPS)の危険因子になることを報告した(Nakao M Nephrology (Carlton) 2016)。また、PDとHDでカルシウム値とPTHの関連性が異なることを報告した(Morishita M Clin Nephrol 2016)。現在、重炭酸含有腹膜透析液の臨床効果、糖尿病PD患者の検討、腹膜病理の検討を行っている。腹腔鏡検査を用いて腹膜透析液の中性化による腹膜傷害を評価し、東北大学との共同研究の研究で極細内視鏡の開発を行っている。

4. 腎性貧血に関する研究

我々は、日本透析医学会データベースを用いた19万人の検討で、血液透析患者において血清フェリチン高値が生命予後悪化に関連することを報告した。また、重要な鉄代謝ホルモンであるヘプシジンの研究を続けており、すでに、透析を受けていない保存期CKDにおいて、腎性貧血の病態に深く関与るすることを報告している。現在は、HD患者やPD患者も対象とし、特に残存腎機能との関連性を検討している。


高血圧・尿酸代謝班

1. 慢性腎不全モデルラットに対するT型Caチャネル抑制薬の脳を介した腎保護効果

TCC抑制薬は血圧に非依存的に様々な機序で腎保護効果を示すことを以前証明した。このたび血液脳関門の通過性に違いがある新規TCC抑制薬としてNIP-301とNIP-302が開発された。今年度の検討でNIP-302の尿蛋白抑制効果が確認された。引き続き高血圧腎不全モデルラット(SHR)と、正常血圧モデルラット(WKY)における腎障害に対する効果、および血圧対する影響、交感神経活性、脳との関連につき検討する。

2. アデニン誘発腎不全モデルラットにおけるアジルサルタンの腎保護効果の検討

24時間血圧は、両群ともベースの血圧が低値であり、アジルサルタン(Azi)投与により腎保護効果、尿ナトリウム排泄の亢進、交感神経活性の有意な抑制を示し、腎臓のACE2活性の亢進を認めた。Azinの多面的に腎保護効果の機序の更なる検討を重ねる。

3. アルツハイマー病モデルマウスにおける脳内アンギオテンシンIIと認知機能障害およびサルコペニアとの関連(熊本大学との共同研究)

アルツハイマー病 (AD)は認知機能低下だけでなく、筋肉量減少や心機能低下を含めた多臓器障害を来す。脳内のレニン・アンギオテンシン系(RAS)の賦活化が認知機能障害を惹起することが示唆されていることから、ADの認知機能と臓器障害における脳内RASの賦活化の影響について、ADモデルマウスである5XFADマウスを用いて検討した。Ang II投与によって5XFADマウスはWTマウスに比し有意な認知機能の低下、海馬のマクロファージ浸潤の増加、血液脳関門の破綻、脳表層皮質動脈でのβアミロイドの沈着増加を惹起した。また、筋力低下、腓腹筋の萎縮、腓腹筋のマクロファージ浸潤増加を認めた。ADモデルマウスでは脳内RAS賦活化による認知機能低下や脳障害、骨格筋障害が惹起されやすいと考えられた。

4. 透析患者における血清尿酸値が全死亡および心血管事故による死亡に与える影響

高尿酸血症は、高血圧や慢性腎臓病の進展因子のみならず生命予後にも影響するとされるが、末期腎不全の患者における血清尿酸値の影響は一定の見解がない。本研究では日本透析医学会のレジストリから血液透析患者、腹膜透析患者を抽出し、血清尿酸値の死亡率への影響を検討した。血液透析患者では全死亡率および心血管イベントでの死亡率は単変量解析および多変量ロジスティック回帰分析でも、低尿酸群では全死亡のリスクおよび心血管イベントでの死亡リスクが高かった。高尿酸血症に対する治療介入は予後を改善させる可能性が考えられた。しかし腹膜透析患者ではこれらの傾向が認められなかった。